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| 〔雨の季節に思い出すこと〕 |
<文字を大きくしてお読みになるには>Internet Explorer の場合メニューバーの表示から[文字のサイズ]→[最大]を選んでください。「今日ノニワカ雨ハ僕ニトッテハ偉大ナル打撃ダッタ」 梅雨さなかの読売新聞一面コラムが引用した、立原道造12歳当時の日記の一節だ。後に詩人となる少年は「月プデオ母サンニ支払フコトニシテ買ツテ来テイタダイタ」傘を失くしたことを悔やんでいる。編集手帳の文章はビニール傘のポイ捨てを嘆いた50代主婦の投書に及び、モノに対する昔と今の意識の違いを綴る。 確かに100円ショップでさえ売られているビニール傘だが、出張先で突然の大雨に見舞われるといったことがない限り、使い捨てに傘を買い求めることはない。傘を大切にする気持ちは、立原少年と変わらない。記憶は終戦直後に巻き戻される。 (写真:参道に4本だけ残った大ケヤキ) 中国から引き揚げてきて、家や家財どころか、三度の食事にさえこと欠いた日々。中学に上がって通学距離が延びても自前の雨傘などなく、濡れて磨り減った下駄履きで登校するのは辛かった。雨足の激しいある朝、家を出かかると、番傘をさして級友が立っていた。父親に言われ迎えに来たという。濡れねずみの登校姿を、彼の父親に見られたらしい。立原少年と似たような年頃だったが、人の優しさと友情に胸の希望がふくらんだ。 ある日、その父親に出くわした。「本が好きらしいな。家に来て読みなさい」と声をかけてくれた。書棚に並んでいたのは吉川英治の時代小説。宮本武蔵や太閤記をむさぼり読むきっかけとなった。父親の仕事を継いだ彼とは、いまも親友以上のつきあいだ。 本にまつわる話をもうひとつ。近隣に弁護士の一家が住んでいた。戦災から焼け残った弓状の出窓が珍しい書斎。夏の窓際に咲いていた石榴の赤い花が瞼に鮮やかだ。戦時下、軍に協力した金属回収会社の二階の6畳一間に、三家族が一部屋ずつ間借りした暮らしからは夢のようで、ときおり背伸びして塀の向こう側を眺めるのだった。 窓から顔を出していた弁護士のおじさんと目が合った。手招きされるまま上がりこむと、書斎は本に満ちていた。天にも昇るような思いの言葉がふんわり届いた。「坊や、好きならいつでも勝手に上がって読んでいいよ」。最初に手にしたのは千夜一夜物語全集。×××と伏せ字の目立つ物語を追い、好奇心をかきたてられずくめだった。性の目覚めだった。 |
(写真:樹齢600年以上、東京で2番目の銀杏の巨樹)東京・秋葉原の歩行者天国を血に染めた6月8日の事件。「秋葉原で人を殺します」と携帯電話のサイトに犯行を予告した25歳の加藤智大容疑者は、ほかにも饒舌に言葉を書き連ねている。「両親に捨てられた」「彼女がいなくて寂しかった」「誰でもいいから構ってほしかった」…。日々の不満が鬱積して孤立感へ傾斜し、現実逃避の向こうにネットやゲームのバーチャルな世界があったことは、なんとなく分かる。 社会のありようと照らし合わせて、解説が試みられているが、あまり説得力はない。朝日新聞の社説は<凶行のなぜを知らねば>の見出しで、「この社会のどこかに生きづらくさせるものがあったのか」「一見平穏なこの社会のどこかに若者を暴走させるものがあるとすれば、それを探って、何とかしなければならない」と書く。いかにも社説らしい筆運びだ。 「自分認めぬ社会に不満」「孤立感生む派遣労働」といった現状は理解できないでもない。だが「つまりは、いまや若者の多くが怒っており、その少なからぬ数がアキバ系の感性をもち、しかも秋葉原が彼らにとって象徴的な土地になっている状況があった」(東浩紀氏=朝日)などと解説されると、それは違うのではないかと言いたくなる。社会からはみ出されたと思い込んだ若者の頭の回路がショートして、のっぴきならなくなったに過ぎない、腹立たしく気色の悪い事件なのだ。こんな事件に普遍性などありはしない。 ただ、少しは可哀想になる。もし誰かいい大人に出会っていたなら、人生は大きく変わっていたのではないかと。日経夕刊のコラム《あすへの話題》に寄稿している防衛大学校長・五百旗頭真氏の登板を楽しみにしている。わけても6月20日の<恩師と教え子たち>に感銘した。修士論文に向かうに当たって、「山形県庄内へ調査旅行に行く必要を指摘された。先生は念入りにも夏休み前に私を呼び、旅行準備はできたかと、一万円を渡された。私はそれで東北周遊券を買った」のくだりで、また加藤容疑者を思い出した。 |
(写真:鬼子母神堂の額)その名は京都大学のゼミ教官だった猪木正道先生。もう一人、高坂正尭先生の名も挙げ、「師に恵まれただけに、私もよき師でありたいと思う」と記す。このような師をいただいた五百旗頭氏も、教え子にこうして思い出される師も、互いに人間の冥利に尽きるのではないだろうか。教師に限らず、よき人物に出会うことこそ、生涯の幸せであり、人生を豊饒にする。だから、加藤容疑者を気の毒に思う。 6月17日、宮崎勤死刑囚に刑が執行された。1988年8月から翌年6月にかけて、4歳から7歳の幼児4人を誘拐し殺した、あの忌まわしい事件は記憶からぬぐい切れない。読売新聞の社会面は<「心のうち」見せぬまま 遺族に謝罪なし>と報じ、初公判から上告審まで傍聴した作家・佐木隆三氏の「戦後の犯罪史に残る悪質かつ残虐な事件で、死刑執行は当然だ」との談話(一部を引用)を添えた。これまた胸の悪くなる事件だ。 朝日は18日の紙面で、<「死刑粛々」なお加速 鳩山法相、計13人執行>と、死刑論議と合わせて特集した。読売の<早期執行法の原則 宮崎死刑囚「特殊な事情」なし>とやや論調に違いがあった。確かに鳩山法相になってから死刑が執行された13人という人数は突出して多い。その是非を問うのもジャーナリズムの手法に違いない。 |
(写真:鬼子母神にもザクロの花)だが、6月18日の朝日夕刊一面コラム素粒子を読んで驚いた。「永世死刑執行人 鳩山法相。『自信と責任』に胸を張り、2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神」と書いていた。法相が20日の閣議後の会見で「大変な問題だ。そういう軽率な文章を平気で載せるということ自体が、世の中を悪くしている」「司法の慎重な判断、法律の規定により、私も苦しんだ挙げ句に執行した」などと述べたことを、朝日も伝えはしたが、文末に付けた「朝日新聞社広報部は『社としてはコメントすることはありません』としている」に、再度、驚いた。まさに木で鼻くくった談話だ。 21日の朝日朝刊は「朝日新聞社には20日、電話やメールなどで約1130件の抗議が寄せられた」と書いたが、広報部談話は「世の中の様々な出来事を題材に、短い文章で辛口の批評をするコラムです。鳩山氏や関係者を中傷する意図は全くありません」と、またもおよそ読者の思いをすくうことのない杓子定規。 だが、21日に素粒子自身が答えた。「法相のご苦労や、被害者遺族の思いは十分認識しています。それでも、死刑執行の多さをチクリと刺したつもりです」「風刺コラムはつくづく難しいと思う。法相らを中傷する意図はまったくありません。表現の方法や技量をもっと磨かねば」と、アッケラカンとした書き方。 朝日夕刊に連載していた《記者風伝》を読み、先輩記者たちの文章を磨く努力に畏敬の念で接してきた。文章を磨くことに終わりはないが、少なくとも一面のコラム子が死に神というたった3字の持つ意味を咀嚼しないまま活字にしてしまい、後になって「もっと磨かねば」と書かれても、それはないだろう、と言いたくなる。もちろん新聞記者は神ではないから、ときに文章の滑りもあろうが、広報部の談話には三遊亭一門が語り継いできた落語の「死神」の含蓄も人間味もなく、ルイ14世の言説さえ思い出させる不遜さを感じた。 |
(写真:千社札がびっしり)事件をきっかけに、秋葉原の歩行者天国が中止になった。ことなかれ主義の典型だ。駅のホームでもデパートや地下街でも、人が集まるところは、どこにでもある。オウムのサリン事件は東京の地下鉄日比谷線で起こされた。つまるところ、事件をアキバと短絡させた結果に過ぎない。日経の朝刊コラム春秋「アキバ、オタク、ネット、ハケン……。強引な連想ゲームではないか。間違った部品を繋げた回路に心の電流は通わない」に同感する。事件に乗じて我が田に水を引く評論が多過ぎないか。 読売の地域版が、東京の歩行者天国は、当時の美濃部亮吉都知事が提案し、「警視庁を口説き落として実現させた」と書いていたが、間違っている。1969年5月、当時の日本教育テレビ(テレビ朝日)のモーニングショーで、美濃部知事と銀座の若旦那が寄り合う銀芽会が顔を合わせたとき、ニューヨークの歩行者天国の話題とともに若旦那たちが発案し、知事が乗り気になった。ところが銀座大通りは国道で、東京都の手が届く話ではない。1年間スッタモンダの末、70年8月2日に実現した。裏話はまだあり、40年も昔の話とは言え、歴史的経緯を変えないでほしい。 |
(写真:願いを込めた絵馬)中央省庁のタクシー・チケット利用者が、ビールなどの供応を受けたことが批判されたことから、国土交通省は23日深夜からチケットの一時廃止に踏み切った。<タクシー券廃止 初日ガラガラ 30人、終電に駆け込む>と読売。この一連の報道にも胸が悪くなった。 発表によると、タクシー接待は17省庁1402人に及んでいる。「道順知っている運転手なら安心して寝ていられる」などの詭弁は、カーナヴィ時代には通用しない。料金が片道25000円となると、開いた口が塞がらない。普通のサラリーマンは、終電に乗り遅れたとしても、5000円に釣りがくるようなホテルを探したり、サウナに泊まったりしてしのいでいる。 <7月も値上げラッシュ ガソリン、電気、航空、食品…>と6月28日の日経。石油価格の暴騰が、様々な形で食卓、生活に影響を及ぼす。暮らしの展望は暗くなるばかりだ。 環境や石油問題に世界の知恵を集める洞爺湖サミット。都心でも日々、テロなどを警戒して警備が強まっている。そのあおりで、七夕の頃に催される東京・入谷の朝顔市も先延べになった。東京メトロの新路線が開通した雑司が谷の鬼子母神に行ってみた。見事なケヤキや銀杏が屹立し、雨音さえのみこんでいた。 (YOU) 写真は鬼子母神で=筆者撮影= 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |
| 中高年の「元気が出るページ」10周年記念会 (読者と執筆者の懇親会)へのお誘い |
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いつも当ホームページをご愛読くださいましてありがとうございます。 さて、当ホームページは今年8月で10周年を迎えます。これもひとえ に読者の皆様と執筆者のお陰と感謝しています。この機会に、読者と執筆者が一堂に会して、交流の集いを 催したいと思います。 すでに予告してきましたので参加希望のお返事を頂いている方もありま すが、改めてご案内いたします。 日時:10月17日(金) 午後1時30分〜4時30分 会場:日本記者クラブ 東京都千代田区内幸町2-2-1日本プレスセンタービル9F 定員:40名ですが既にお申込頂いている方がありますので、先着順10 名で閉め切らせていただきます。 (必ずお返事 いたします) 予定会費:7千円(懇親会立食パーティー代) ご回答は、下記メールアドレスに次の項目をご記入の上お送りください。 1、お名前 2、ご住所 3、メールアドレス 4、参加希望のご回答 5、会内容へのアイディア、ご意見、ご要望 送り先メールアドレス:genki@abox3.so-net.ne.jp ─────────────── 中高年の「元気が出るページ」 編集人 村上芳信 ─────────────── |
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