6月のヨーロッパ 自然と人と・・・出会いの楽しみ          第2回   清水武

(写真:クロンボー城の海の向こうはスウェーデン)



          出会い その2           「あなたは“静かさ派”それとも“賑やかさ派”? 」

(写真:コペンハーゲン駅の構内)


(写真:アンデルセン博物館の裏通り)


(写真:オーデンセの街のカフェテリア通り)


(写真:オーデンセの駅の建物)

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 3 日目はアンデルセンの町オーデンセへ。特急で西へ 1 時間 20 分。私の切符は偶然にも 車両の 61 番席でした。スタンダード(普通車)席ですが 4 人が向き合う形の間にはテーブ ルがあり、頭が揺れないようにヘッドレストもつき、飛行機のビジネスクラスくらいゆっ たりとしています。

(写真:ニューハンの港のデッキに座る若者たち)

 向かいに座ったのは 30 代と思われるデンマーク女性でした。まともに 目を向けるのがはばかれるほど胸の谷間が大きく開いています。彼女はもう一つの空いているシートに足を伸ばすと赤い表紙の本を取り 出しました。ブックカバーのタイトルは「Hegel」。

  「難しい本を読んでいるんですね。学生さんです か? それとも働いていらっしゃる?」
 「高校教師です。ヘーゲルは面白いですよ。これ からオーデンセにある大学 に行くところなんです」
 「それは偶然ですね。実 は私も 40 年前には高校の教師をしていました」
と仲間意識が出てきて少々勢い込んで話しかけたところ、彼女はあわてて指を口に当て
 「静かに!」とのサインをしたのです。

 よく見ると通路の上には「Stillezone<Silence zone>」(静粛地帯)との掲示があります。 途中でアナウンスもありました。「車内では静かにお願いします。会話をされる方は別室で お願いします」と。

 なるほど、なるほど、国民性とはこうも違うものなのですね。一般に日本の電車内も静 かで、座っている乗客は寝ているか新聞に目を通しているか、最近では携帯メールに集中 していますよね。

 かつて私が現役時代に滞在していたラテン・アメリカではまったく反対でした。電車や バスの中は賑やかで、原色が塗られたバスの中ではビートのきいた音楽まで響いていたも のです。

 あるとき研修会で訪日したパナマ人が帰国後に語った言葉の驚きは忘れることが できません。彼はいみじくも言ったのです。
 「日本人はどこに行っても親切でした。でも“Tokio estaba muerto”(東京は死んでいた)」 と。

 いつも賑やかな(日本人にはうるさいくらいの)中南米から、街も電車内も静かなト ーキョーに行くと、このような感想を抱くのも当然なのかもしれません。

 ところ変われば生き方も文化も変わるのです。そんな感慨を乗せながら、列車はどこま でも緑の平原を走っていたのでした。

(写真:ニューハンの港に浮かぶ船)


(写真:アンデルセンの人魚姫を訪ねたが、現物は上海の万博に出ていた。代わりに同 じ位置にその映像が映されていた。)



上記は清水 武さんの「気ままな随想」ドンキホーテより転載


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