第15回
 念仏が利いたわけではないだろうが、なぜかマリンたちは自動小銃を前方に向けてダダダダダっとぶっぱなすと、海岸の方へ急に突進して行った。そして、前と同じように集合し番号を掛け合って、上陸用舟艇に乗って帰って行った。
 帰っていったのを確認してから、蔭から飛び出し全身に食いついている蟻どもを急いで払い落とした。払い落とすと、体のあちこちに蟻の牙が肌に食いついたまま残り、二、三日その痛みが残った。
 あんな小さな生き物でも、人間が無抵抗の時に、集団で襲いかかってくる凄さには驚いた。自分が衰弱して行き倒れた時のことを想像して、恐怖さえ感じた。
 宮川もなんとか逃げおうせて、舟のエンジン音が遠のいた頃近くまでもどってきて、前に打ち合わせたとおり、ここで初めて
 「山!」
 「川!」
 という合い言葉を使った。ここも危険になったので、明日は早速ここをはなれ、できるだけ遠くへ逃げようと話し合った。




絶好の寝床

 翌日、移動をはじめて何時間かジャングルの中をさまよい歩いて行くと、小高い丘の傾斜地に木の柵を見付けた。丸太を杭のように縦にして、高さ2メートル、横4メートル四方に囲ってあった。
 ジャングルはすでに夕暮れになってきていた。獣などの外敵から身を守るには絶好の場所だ。今夜はここで寝ることにした。
 持参していた30センチ幅で1メートルぐらいの板を囲いの中へ放り込み、二人ともよじ登って中に入り込んだ。板を敷き込み、屋根がないので満天の星を仰ぎながら、久し振りになんの心配もなく今夜は熟睡できると思った。
 だが、その夜に限って二人ともなぜか眠つかれず、まんじりともせぬうちに夜が明けてしまった。

  

 木の柵を出て、これは一体何だったのだろうと一回りしてみた。太い丸太に鉈のようなもので、粗削りな文字とも絵ともつかない印が彫ってあった。二人でよくよく考えてみると、これはとんでもないところに寝てしまったと気づきあわてた。現地人の墓場に違いない。獣に死体を食い荒らされないように高い柵を巡らしてあるのだ。
 柵の中は土が平たくならされていたので分からなかったが、われわれはたくさんの遺体の上で寝たわけで、どうりで寝心地が悪かったと笑い合った。
 宮川とは、このとき初めて、打ち解け合ったような気がした。<br>  この日は罰が当たったのか、食べ物をあちこち見つけ歩いても、ジャングルが深くなるばかりで、これといった食べ物にありつけなかった。
 やっと、レモン1個を拾い、二人でかじりながら善後策を相談したが、よい知恵も浮かばない。結局いままでとはちがう他の海岸線へ出てみることにした。<br>

                                 つづく
第16回は3月23日(火)の予定
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