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| 勝田副長の指揮で、飛行機からはずした13ミリ(機銃)や機関銃で、ならべておいた燃料用ドラム缶を一斉に撃った。ガソリンに火がついて瞬く間に引火、途端にあたり一面真昼のようにあかるくなった。敵の姿がまるみえになり、それを目当てにこちらから銃撃をくわえた。上陸できないとみた敵は退却していった。 このときの反撃は成功し敵に大きな打撃をあたえた。日本軍の抵抗力を強く米軍に印象づけたようだった。 暗黒の壕の中で 翌朝、8月8日、ラバウルから味方の一式陸攻の編隊が飛んできて敵艦隊を雷撃した。魚雷のあたった艦上で、白い制服の敵兵が右往左往している姿をわれわれは肉眼で見ていた。敵艦艇が11隻ぐらい沈んでいくのを数えて、一人が本部のある大きな壕へ報告に出ていった。が、それっきり彼は戻ってこなかった。 このあと敵は機上からの爆撃、つづいて艦砲射撃、また爆撃といわゆる波状攻撃をしかけてきた。10時ごろがいちばん激しく、宮川と壕の中へ避難していたが、そのとき至近弾をくらった。 壕の入り口前には土嚢(どのう)といって、爆風よけに土の山を盛ってあったが、その土が崩れて穴の入り口を埋め、蓋をされたようになって外へ出られなくなった。二人は爆風にふっ飛ばされ気絶した。 それからどのぐらいたったのかわからない。 とにかく、壕内は真っ暗。なすすべがない。 あれだけ耳が千切れんばかりに轟いていた爆弾や砲撃の音、がまったく聞こえなくなっている。 『ああ、おれもいよいよ地獄の底へ落ちてゆくんだな』 と観念した。 しかし、しばらくして眼が慣れてくると、60キロの不発弾(直径20センチ×長さ85センチ〜90センチ)がそばにつき刺さっていて、天井には不発弾がつき抜けた穴があいている。穴には椰子の葉がかぶさり、そこからのかすかな明かりで、宮川の姿がぼんやりと見えた。 耳をすましていても結局、この防空壕からは敵の砲撃も、別の壕にいる仲間の敵に向かって突っ込む喚声も、なにも聞こえず、ウソのように静かだった。なにかことが起これば、天井の穴から這い出ても、仲間と行動をともにする気でいたので、外界の物音に耳をそばだてていたが、いつまでたってもなんの物音もしなかった。 仲間は、われわれが意識を失っている間に捕らえられたか、全員戦死してしまって、われわれ二人だけが生き残ってしまったのかもしれない、と思った。 あるいは砲撃が終わって、いよいよ敵が上陸してくる頃なのかもしれないとそう思っても、皆目状況がわからず、これからわれわれはどうすべきなのか、判断しかねていた。 しかし、日本軍はいままでに一度も負けたことのない軍隊、一時的には攻め込まれても、まだラバウルもショートランドの基地もある。すぐその基地から反撃に出て、きっとこの島を奪還にくるにちがいない、早ければ、2、3日、遅くても一週間と宮川がいうのを聞いて、私も同じ考えだったので、早く援軍が来るのを心待ちにした。 こんな異常事態でありながら、不思議と切迫感にさいなまれもせず、悲観的にもならず、たとえ泥水をすすっても、生きていさえすればなんとかなる、と信じていた。 自分たちが生きているのを自覚しはじめると、こんどは急に空腹感がおそってきた。なにしろ6日の夕食を食べたっきりで丸一日、なにも食べていないのだ。爆撃に避難したかと思うと、こんどは、急に火事場のばか力を出し、200リッター入りのドラム缶を何本もゴロゴロころがしたりしたのだから。 この壕は、6、7人は入れる壕で、士官が緊急避難に使う所だった。私は士官の命令で、食糧をこの壕へ運びこんだことがあったから、この壕のことは宮川よりよく知っていた。入口が一つで幅2メートル、高さ2メートル、奥は20メートルぐらい入ると二手に分かれて、わざと曲げてつくってあった。 防空壕がまっすぐのままでは、爆撃されたときのものすごい爆風がまともにあたって、人間は叩き付けられたり、奥まで吹き飛ばされて死傷してしまうので用をなさない。 ついでに説明しておくと、爆撃されたときの防御する姿勢は、両手とも四本のゆびで両眼をおさえ、親指は両耳穴をふさぎ、口は開けたままにして地べたに体をながくして伏せるのがよい。そうしないと、眼球が飛び出たり、内臓が破裂することがある。 ![]() 不発弾処理 腹が減ってヘトヘトになりながら、二人を悩ましたのは、いつ爆発するかわからない不気味な不発弾の処理だった。 最初、これらの不発弾は二人とも話に聞いていた時限爆弾ではないかと思った。しかし時計のコチコチという音もしない。爆弾を扱ったことがあるので、不発弾の矢羽の下に付いている風車を、壕にたまたまあった針金で、信管にふれないようにしっかり縛った。それからは大胆になって、埋まっている弾の周囲の土を手でほじくったり、左右に爆弾を揺すって、周りの穴を大きくして引き抜いた。もしも爆発したときのために遠ざけておこうと、向こう側の穴へゆっくり運んだ。運び終えたあとは、二人ともぐったりしてしばらく口もきけなかった。 つづく 第4・5回は12月29日(火)の予定 読み終わったらこのウィンドウは閉じてください。 |
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