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赤土のデコボコ道を走り続け、ピタ県知事庁舎まで行って記念写真を撮って知事とお別れした。言葉を交わすことこそなかったが、大きな体に温かな人柄が滲みでている知事さんだった。 マムーに戻り遅い昼食をとって5時を大分過ぎてからの出発となってしまった。高地ギニアのファラナまで180キロ。S氏は車窓によりながら、ここはよく買い物にきたベルタヤ村で、川に沿ったところでキャンプをしていた、などと懐かしげに話されるのだった。放送記者のバリー氏は車中ではいつも原稿書きに余念がなかった。行く先々で電話を借りて、放送局に原稿を送っているのだった。残念ながら私たちはその放送を一度も聞くことができなかった。 ファラナへ到着した時は夜もかなり更けていた。有り難いことにゲストハウスの1棟を私1人に割り当てられたので、早速シャワーを浴び優雅な気分でゆっくり体を休ませることができた。ここは1982年に第4回西アフリカ経済協力機構の会議のために建てられたゲストハウスで、西アフリカ16ヵ国の要人が泊まったという。内外の要人が快適な生活をするようにとの設備が整えられていて、家具調度品もなかなか豪華なものであった。 ゲストハウス快適なベットで快く眠り目が覚めてみればこの日は12月31日、大晦日であった。庭に出てみると、1棟ずつ独立して造られた建物は、ギニアの民家風のスタイルを取り入れた瀟酒なデザインで、それぞれの棟の入り口にはカメルーン、シェラレオネ、ガーナなど国別の標識が当時の儘つけられていた。
「アフリカでこんな立派なゲストハウスに泊まるなんて思いがけないことね」 朝食に別棟の食堂に集まった時に、皆から一様に感激の声が上がった。 ファラナから86キロ南、森林ギニアの大きな町キシドゥグに向けて出発した。森林ギニアはシエラレオネ、リベリア、との国境地帯にあたり、熱帯雨林に覆われている。ことに南東部のリベリアとの国境にはニンバ、シマンドウ山脈があり、その最高峰のニンバ山は標高1768メートル、付近は年間2200ミリにも達する降水量があるという。 ニジェールの源流、源流と大騒ぎする私たちを、ギニアの人達は理解できないのか、 「これから行く先にジョリバはいくらでも見られるのに」 と首をかしげていた。キンドゥグへの途中のチロ村で、ニジェール川への道を尋ねた村人に案内されて、幹線道路から外れ川岸へと車を走らせた。車で行かれる限りの源流をと願ってきた私たちは、やっとここで思いをとげることができると喜び合った。川岸近く車を降りて葦のような丈の高い草が一面に生い茂る草原を、体で分け入るようにして川岸に達した時は、マンゴ・パークが初めてニジェール川を見た時、神に感謝の祈りを捧げたという喜びがわかるような気持ちであった。 だがその川岸に下り立ってみると、とてもここが源流とは思われなかった。川幅はかなり広くて流れも穏やかで、水は土色に濁っていた。S氏が村人に尋ねたところ、ここから先は国境を越えてシエラレオネとなり、源流はその山塊地帯であるという。私たちもギニアでこれ以上を望むのは無理なことと、川の上流を眺めやりながら断念するほかなかった。ニジェール川の源流地帯に行くことは叶わなかったが、川のおおもとを突き止められた思いがして嬉しかった。向こう岸から葦を束ねて肩に担いだ青年が渡ってくるのが見えたが、川の中ほどでも膝上くらいの深さだった。 アシ?ヨシ?を運ぶ青年川の水に手を浸していた私に、しきりに砂をすくっていたS氏が、 「ここの砂には砂金がまざっていますよ」 と掌の砂を太陽にかざしながら見せてくれた。その砂の中には確かに小さな光るものが混じっていた。かつてニジェールの上流から船で運ばれ塩と交換された金は、この辺りから採集されていたのだろうか。ジェンネや、トンブクトゥが、塩金貿易で栄えたという昔に思いを馳せながら、私は一握りの砂をビニールの袋に掬い入れた。 ニジェール川は、このほか高地ギニアの山地を源流とするミロ川、テンキソー川、ディオリバ川など幾つもの川が、高地ギニアのクルッサあたりからシギリにかけて合流し、次第に大きなニジェール川となって流れて行くのだということであった。 幹線道路に戻って走りだすと道に沿った家の白い壁に、大きく蛇や小鳥の絵が描かれているのが見られた。どの家も白い壁で一様に、素朴で楽しい動物の絵が描かれていた。 白い壁には素朴で楽しい動物の絵が。キシドゥグは木材の産地で、木工所には木のベッドや椅子などが沢山並んでいた。県知事を表敬訪問して昼食を招待された後、ミュージアムに案内された。この建物の入り口には錆び付いた小さな大砲が、外に砲口を向けて置かれ、中にはフランスの内陸侵略に対して、最も根強い抵抗戦争を16年余りにわたって戦ったという、サモリ・トゥレを顕彰する絵が壁に掛けられていた。そのほかには数点、民族的な木彫りの彫刻やお面が飾られていた。 キシドゥグの娘たち 町の中の賑やかなマルシェ(市場)には金製品、銀製品を並べている店が沢山あった。私たちが品定めをし値段の交渉などしている所に、S氏が「みんな急いでください!」と呼びにきた。私はこの地の記念にと金のイヤリングだけを買って車に走った。バスの中ではダボ氏が、 「ファラナの知事が、皆さんを今夜のパーティーに招待したいといっているから」 と、時間を気にされているのだった。思いがけない大晦日のイベントに、車内はどっと歓声が上がった。暮れかけた道を車は猛烈なスピードでファラナへと向かった。 (ニジェール川源流地帯を行く 第3回/終) ┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬次回更新は9月8日(金)┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬
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